明治の香りの残る旧「東京市」に住む


都心居住のたのしみ・・・千代田区の住宅

 

 

千代田区には地区計画があり、エリアごとの特徴を保ちながら
次の時代へ町のよさを受け継いでいこうとしている。
戦災をまぬがれたこのあたりは、藪蕎麦など明治時代東京市15区の雰囲気を
今に伝える。

藪蕎麦まつや

いせ源竹むら

[戦災を免れた老舗の佇まい]

明治時代当時の「神田区」であったこの界隈は
明治の文豪夏目漱石が小説「彼岸過迄」の舞台にしたエリア。

ちなみに漱石は当初建築科進学を選択し
後に友人の勧めにしたがって英文学に進路変更をしたという。

建築物や都市空間を登場人物の心象風景や行動に溶け込ませ
作品に奥行きとリアリティを与えているのはそのような背景があるのかも知れません。

そんな漱石の心理劇が展開されたのが東京市の中心に位置するこの界隈です。

 

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東京市の中心・神田区

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[東京23区と旧東京市15区]
今の千代田区は旧東京市の神田区と麹町区が戦後合併して誕生。


[東京市全図のうち神田付近]

(方位は図の右が北・左が南、タテヨコの線1目盛が5町(約540m))
神田区は縦横に発達した市電網の往来する当時の東京市15区の中の都心でした。

その当時の東京の繁華街、市電小川町停留所の様子は、
下の記述のように百年後の今とあまり変わらない状況だったようで
この界隈が大変栄えていた様子が伺えます。

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「電車は入れ代り立ち代り彼の前にとまった。
乗るものは無理にも窮屈な箱の中に押し込もうとする、降りるものは権柄ずくで上から伸しかかって来る。
敬太郎はどこの何物とも知れない男女が聚まったり散ったりするために、
自分の前で無作法に演じ出す一分時の争を何度となく見た。」

(夏目漱石『彼岸過迄』(明治45年)より)

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[明治45年の神田界隈]

市電をはさんで神田郵便局(左)と万世橋駅(右)
須田町停留所付近から御茶ノ水方向を見る
万世橋駅は甲武鉄道(現中央線)の駅で後の交通博物館(2006年閉館)

(東京駅と同じ辰野金吾設計の万世橋駅(関東大震災で焼失)は
東京駅ができるまで東京一立派な駅舎といわれた

 


[現在の千代田区神田界隈]

ビルの谷間に木造の2階家が残る
市電の須田町停留所のあったあたり

今は市電の代わりにこの下を都営新宿線が通っている

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このように明治からの歴史を背景にもちながら都心のビル街となった場所に建つ住宅のたたずまいを模索し

(1)全体的な外観はビル街に溶け込むようにシンプルなグリッドデザインとする

(2)明治の歴史が息づく町並みに配慮し外部空間を構成する部分に古い時代を思い出させる要素を入れる

(3)南東の角に外部吹抜をつくりプライバシー上の緩衝地帯とし、そのオープンスペースから採光を採る

このようなことを基本に設計をすすめました

 

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1 外部構成

都心のビル街になじむシンプルな外観

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青空の見える外部吹抜

 


連子格子のような手摺の表情

 


採光条件の厳しいビル街の中の立地ですが
冬季でも日の当たる部分を外部吹抜にし
そこから各室に 採光を得るように計画

 


日の光が射し込むコーナー部分を屋上庭園としています

 


外部と内部の間の緩衝帯でもある3階4階5階の外部吹抜の見下ろし

 

 


ビル街に溶け込むシンプルなグリッドデザイン
鉄骨造のためRC造にくらべスリムな柱梁ですっきりしたプロポーションとなっています

 

 

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2 アプローチ

玄関へのアプローチや道路面には界隈に残る和の表情を取り入れて

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アプローチは御影敷石・洗い出しなど伝統的な素材による落ち着いた表情

 


壁タイルや軒天井などにも和の雰囲気

 


植栽にはアセビ、フッキソウ、ナナカマド

 


 

 

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3 玄関

玄関内部は白木を生かした柔らかい雰囲気の内装
土間の仕上は燻し瓦風のタイル

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エレベータ扉、車庫へのスチールドアなども枠巾木等の造作材とコーディネート

 


絵をかけるためのカウンターつきの壁は間接照明になっています

 


エレータホールつき当たりはアイストップとなる飾り棚

 

 
造作材にスプルス、床材に松を使用し和風に仕上げた


視線を奥へ誘い込む玄関からエレベータホールへのつながり

 


大きなはめころし窓から見える植栽

 


ピクチャーウィンドウからシマトネリコなどの植栽が見え
玄関には杉でつくられたベンチが造り付けられ
ちょっとした会話などのときに腰掛けられる


ピクチャーウィンドウからみえる植栽に当たる日の光が
時刻・季節の移り変わりを 教えてくれる

 

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4 応接室

内装はブナの無垢フローリング、ブナの壁パネルなどブナ材で統一
障子を入れて視線と採光のコントロールをするとともに部屋の雰囲気を整えています

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東南の角に位置する応接室

 


雪見障子を閉じたところ

 

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5 居間食堂

応接同様内装はブナの無垢フローリング、ブナの壁パネルなどブナ材で統一
照明は明るさを優先し昼白色の蛍光灯

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南東のテラスに向いた長いコーナーサッシを背にした居間
無垢のバーチフローリングの床が質実でゆったりとした居心地のよさをささえています

 


奥のダイニングルームとつながる居間

 


壁・建具・枠・巾木・床をバーチ(ぶな)で統一
生成りで自然な風合いの空間に

 
テラスを介してLDがつながる           テラスにはシマトネリコの植栽

 

 

 


キッチンは清潔な白で統一

 

 

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6 外構

ビルの立ち並ぶ都心の商業地域ですが
極力植栽につとめ安らいだ表情を演出

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シマトネリコの株立ち

 
シマトネリコ    マンリョウ

 
アセビ    イヌマキ

 
マンリョウ    フッキソウ、ツワブキ

 


3階テラスからの夜景

 

 


しっとりとした雰囲気がただよう夕景

 

 

三菱地所ホーム・設計施工
邑都設計工房・基本設計・実施設計・工事監理

 

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